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介護事業の規制緩和を 公正取引委員会が報告書 特養の株式会社参入や「混合介護」弾力化を促す内容に

①公取委 特養の民間参入認めるよう促す報告書
 2016年9月5日 NHK

高齢化が進む中、特別養護老人ホームの不足を解消するため、公正取引委員会は、現在は認められていない株式会社によるホームの経営を可能にすることなどを国や自治体に促す報告書をまとめました。

特別養護老人ホームの空きを待つ要介護3以上の在宅の高齢者はおよそ15万人に上り、施設の不足などをどう解消するかが大きな課題になっています。

こうした中、公正取引委員会はことし1月以降、介護サービスの事業を行う483の株式会社などを対象にホームの経営に参入する意欲があるか尋ねる調査を行いました。

いまの制度では、特別養護老人ホームは公益性が高いことや倒産の懸念などから株式会社による経営は認められていませんが、調査に対して、15%の会社が「意欲がある」と答えたほか、半数が「条件次第で検討したい」と回答したということです。

この結果を受けて、公正取引委員会は、株式会社によるホームの経営を認めるよう法改正することや、税制面や補助制度でも優遇されている社会福祉法人と同じように扱うことなどを国や自治体に促す報告書をまとめました。

記者会見した公正取引委員会の杉本和行委員長は、「介護分野では需要に対し、供給が足りない。民間企業の参入障壁を下げて介護サービスの供給量を増やすことが必要だ」と述べました。

②介護事業の規制緩和を 公正取引委が報告書
 2016年9月5日 日本テレビ

 特別養護老人ホーム(=特養)への入居待ちをする人が約15万人にのぼる中、公正取引委員会は5日、株式会社の参入など介護事業の規制緩和でサービスを向上させるべきとする、報告書をまとめた。

 現在、特養を開設できるのは社会福祉法人などに限られ、株式会社は参入できない制度になっている。これについて報告書は、合理性はなく競争を妨げているとして厚生労働省に変更を求めている。

 また、たとえば介護ヘルパーが利用者と家族の食事を同時に作れないなど、保険内と保険外のサービスを一体で受けられないことについても見直すべきだとしている。

 公正取引委員会は、こうした規制を緩和すれば入居待機者が減ったりサービスが向上したりするほか、介護従事者の賃金アップにもつながるとしている。

 ただ、実現には法改正が必要な部分もあり、厚生労働省や自治体などの協力が必要となる。

(春之介のコメント)
ネットでいち早く見つけたのはNHKと日本テレビという、最近では政府よりの報道機関である。

その伝え方も、NHKは特別養護老人ホームへの株式会社参入に絞ってであり、日本テレビは加えて介護保険と保険外サービスの一体的な運用についても言及している。

政府一体となって社会保障改革をしているので厚労省や内閣府が自説を推進するのは分かるにしても、独立委員会である公正取引委員会が、それを前提にするような調査報告書を出したことは疑問がある。

つまり公正取引委員会は、中立的な立場で介護分野の競争を促進することは理解できても、株式会社参入や混合介護の旗振りをするのはいかがなものであろうか。

以下の調査報告書(概要)を見てびっくりしたのは、「混合介護」という言葉が使わていることである。

正直あまり報道ベースでは聞いたことがない。
介護事業の規制緩和を 公正取引委員会が報告書 特養の株式会社参入や「混合介護」弾力化を促す内容に_e0151275_13388.jpg

「混合診療」が一部解禁されたので、それを前提にした先取りの議論になっていく。

さて「混合介護の弾力化」については、「保険内サービスと保険外サービスを組み合わせた同時一体的な提供を可能とすることや、質の高いサービスを提供するとともに、利用料金を自由化すること。」と概要に書かれている。

そして事業者は自由料金設定や、希望する利用者は特定のヘルパーさんの指名料付きで頼めるという何か違った業界話かという指摘までされているのだ。

そうすれば事業者にとって効率が上がり、それが利用料金低下や人件費アップにまわせると楽観的すぎる希望を書いている。

つまり価格競争が起これば市場メカニズムでうまくいくということらしい。

そこでは利用者が正しい判断をするという前提であり、そのために情報公開が必要とする論理である。

株式会社参入は既定路線であるので言及しない、また、4.「情報公開・第三者評価」はすでに散々に酷評されて制度も形だけであり、いまさら項目に上げることすらないことだろう。

つまり、今回は「混合介護」デビューとして、介護保険と保険外サービスが入ることで起きるであろう長所のみを取り上げた報告書であるといえる。

反対に言えば、これから顕在化する「混合診療」の歪みと同様なことが「混合介護」でも起こるということに触れない、偏ったものであるとみてとれる。

なぜ介護保険を作る必要があったのであろうか、全額公費や民間保険で自助努力という選択肢もあったろうが、やはり国民皆保険制度が定着しており互助の意識が浸透している日本だからできたことなのだろう。

それをTPPにみられるように、株式会社参入→市場開放・市場メカニズムで外資導入で利益を収奪されるのでは、国民の社会保障は瓦解するのはみえている。

「混合診療」や「混合介護」で抑制的に利用がされていくことが、かえって医療費、介護費の増加を招くという指摘が実感として正しいように思う。

こうした政策をみていくと、国民生活不在の議論に思える。

特に現場を分かっている事業者、そして研究者が声を上げて議論を巻き起こしてほしい。


<以下参考①> 抜粋
介護分野に関する調査報告書について
平成28年9月5日 公正取引委員会
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/sep/160905_1.html

 介護分野については,平成26年に介護保険法が改正され,「地域包括ケアシステムの構築」に向けた改革が行われたほか,平成27年度にスタートした第6期介護保険事業計画では,平成37(2025)年を見据えた内容の計画が策定されるなど,平成37年を当面の目標に,地域医療介護提供体制の整備に関する種々の取組が行われてきている。
 
 また,介護分野については,「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)において,「介護サービスが利用できずやむを得ず離職する者をなくすとともに、特別養護老人ホームに入所が必要であるにもかかわらず自宅で待機している高齢者を解消することを目指し、介護ニーズに応じた機動的な介護サービス基盤を整備し、地域包括ケアを推進する」とされるなど,高齢者の利用ニーズに対応した介護サービス基盤確保への取組がなされている。加えて,「日本再興戦略2016」(平成28年6月2日閣議決定)において,介護分野について生産性向上が求められているほか,公的保険外の介護予防や生活支援等のサービス市場を創出・育成し,高齢者の選択肢を充実させていくことが求められている。
 
 これらを踏まえ,公正取引委員会では,事業者の公正かつ自由な競争を促進し,もって消費者の利益を確保することを目的とする競争政策の観点から,介護分野の現状について調査・検討を行い,競争政策上の考え方を整理することとした。
 
 公正取引委員会としては,前記のような競争政策の観点から介護分野について検討を行うに当たっては,[1]多様な事業者の新規参入が可能となる環境,[2]事業者が公平な条件の下で競争できる環境,[3]事業者の創意工夫が発揮され得る環境,[4]利用者の選択が適切に行われ得る環境が整っているかといった点が重要であると考えられることから,主にこれらの点について検討を行った。


介護分野に関する調査報告書(本体) (PDF)
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/sep/160905_1.files/03.pdf

(別紙)介護分野に関する調査報告書(概要) (PDF)
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/sep/160905_1.files/02.pdf

(別添2)アンケート調査の集計結果 (PDF)
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/sep/160905_1.files/05.pdf


<以下参考②>
介護分野に関する意見交換会 公正取引委員会
第2回 平成28年5月23日 ○介護サービス・価格の弾力化(混合介護)
http://www.jftc.go.jp/soshiki/kyotsukoukai/kenkyukai/kaigo/kaigobunnya-2.html


資料2 介護サービス・価格の弾力化(混合介護) (PDF)
http://www.jftc.go.jp/soshiki/kyotsukoukai/kenkyukai/kaigo/kaigobunnya-2.files/konngokaigo.pdf


<以下追加引用> やはり、そうみたいだ!
介護・保険外サービス、組み合わせ柔軟に 公取委
「混合介護」の弾力化提言
2016/9/5 日経新聞

 公正取引委員会は5日、介護分野の規制改革を促す提言をまとめた。柱は介護保険と保険外サービスを組み合わせた「混合介護」の弾力化だ。いまの制度では、介護職員が介護が必要な人とその家族の食事を一緒につくれないなど制約が多い。効率的にサービスを提供できるようにして介護職員の生産性を向上し、賃金引き上げにつなげる。

 介護保険制度では、保険を使ったサービス時間中に保険外のサービスを提供することができない。このため、介護が必要な人とその家族の食事をまとめてつくれないなどの問題が起きている。

 公取委はこうした規制を見直せば事業者の効率や採算が改善し、介護職員の賃金増につながるとみている。利用者の負担する料金が下がる効果も期待できる。

 厚生労働省によると、2015年度に介護や介護予防の公的サービスを利用した人は605万人で過去最多になった。高齢化に伴い介護が必要な人は今後も増える一方、低賃金を理由に働き手が集まらず、25年には約38万人の人材不足を見込む。

 このほか、民間企業が特別養護老人ホームを開設できるよう参入規制の緩和や税制や補助金制度を公平にすることなども提言に盛りこんだ。公取委は今回の提言を政府の「規制改革推進会議」で取り上げるよう求めていく方針だ。

<以下追加引用> 財界の主張
「混合介護」を大きく育てよ (9/6日経新聞・社説)
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO06913020W6A900C1EA1000/


<以下追加引用>
規制改革推進会議 「混合介護」容認の方向で検討を確認
2016年10月6日 NHK

政府の規制改革推進会議は、6日の会合で、介護事業者が介護サービスと家族向けの食事の用意など介護保険の対象外のサービスを行う、いわゆる「混合介護」を容認する方向で検討を進めていくことを確認しました。

政府の規制改革推進会議は6日に開いた会合で、すでに設置されている「農業」に加えて、「医療・介護・保育」、「人材」、「投資等」の分野を担当する3つの作業グループを設置することを決めました。

そして、「医療・介護・保育」の作業グループでは、介護事業者が介護サービスと家族向けの食事の用意やペットの散歩など介護保険の対象外のサービスを行う、いわゆる「混合介護」を容認する方向で検討を進めていくことを確認しました。

規制改革推進会議は、今後、作業グループごとに具体的な検討を行い、来年6月をめどに答申を取りまとめて、安倍総理大臣に提出することにしています。


「介護」「転職」重点分野に=規制改革会議、4部会で議論
2016/10/06  時事通信社

 政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)は6日の会合で、「人材」「医療・介護・保育」「投資等」の3作業部会の新設を決めた。先行して設置された農業部会と合わせ、4部会体制で議論を進める。主に介護サービス改革や転職支援を重点分野として扱い、来年6月をめどに答申をまとめる。
 
 人材部会は安念潤司中央大法科大学院教授、医療・介護・保育部会は林いづみ弁護士、投資等部会は原英史政策工房社長がそれぞれ座長として議論の取りまとめに当たる。
 
 人材部会は、労働市場の流動化に向け「転職の際に不利益とならない仕組みづくり」を議論。医療・介護・保育部会は、介護保険で賄われるサービスと自己負担によるサービスを組み合わせる「混合介護」の利用促進や特別養護老人ホーム運営の参入規制緩和などを検討する。投資等部会では、ICT(情報通信技術)の活用や通訳業務の規制緩和を重点的に取り上げる。
by negitoromirumiru | 2016-09-06 01:08 | 福祉 | Comments(0)


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