児童虐待 再発防止で検証委
2012年10月16日 NHK名古屋放送局
9月、愛知県豊橋市で4歳の長女に十分な食事を与えず放置したとして、夫婦が逮捕された事件を受けて愛知県と豊橋市は、事件の再発防止のため、心理学者や小児科医など、児童虐待の専門家6人による検証委員会を設置し15日、初会合が開かれました。
豊橋市などによると、夫婦は長女に定期的な健康診査を受診させず、住民票に記載された住所と異なる、市内の別の場所で生活していたということで、市の健康診査の担当部署は、今回の事態を把握できませんでした。しかし、事件のあと、市の子ども手当の担当部署が、夫婦が提出した申請書類から父親の勤務先を把握していたことがわかり、市の内部の連携のあり方も課題になっています。
<以下参考引用>
児童虐待死亡事例等検証委員会の開催について
豊橋市において平成24年9月20日に発生した育児放棄による4歳女児死亡事件に関し、事実の把握と発生原因の分析を行い、必要な再発防止策を検討するため、「県社会福祉審議会児童福祉専門分科会児童措置審査部会」に検証委員会を設置し、豊橋市と共同で同委員会を開催することとしました。
児童虐待死亡事例等検証委員会 委員
折出健二(おりで けんじ)愛知教育大学
加藤幸雄(かとう さちお)日本福祉大学
神谷常憲(かみや つねのり)愛知県児童福祉施設長会
志水哲也(しみず てつや)小児科医師
多田 元(ただ はじめ)弁護士
前田 清(まえだ きよし)県中央児童・障害者相談センター児童専門監
<以下引用>
20130126 中日新聞愛知県版
<以下追加引用>
幼児虐待死豊橋市の対応不十分
2013年03月22日 NHK名古屋放送局
去年、愛知県豊橋市で、4歳の女の子が両親から十分な食事を与えられず、その後、死亡した事件を受けて、愛知県が設置した専門家による検証委員会は、「豊橋市の対応は不十分だった」とする報告書をまとめました。
事件は去年9月、豊橋市の夫婦が、病気で衰弱した4歳の長女に十分な食事を与えず放置し、死亡させたとして、保護責任者遺棄致死の罪に問われているものです。
豊橋市の対応が適切だったかを調べるため、愛知県が設置した6人の専門家による検証委員会は22日、名古屋市で会合を開き、これまでの調査に基づいて、報告書をまとめました。
それによると、この夫婦の場合、妻が、突然、市民病院に駆け込み、出産したという経過があったことや、子どもに定期的な健康診査を受けさせていなかったことなど、子どもへの虐待につながるリスクが高いとされる情報を、豊橋市は、事前に得ていたとしています。
しかし豊橋市は、こうした情報を有効に活用せず、家庭環境の調査なども不十分だったとしています。そのうえで、事件の再発防止に向けて「行政が虐待につながるリスクが高いとされる情報を得た場合は、その家庭に関する情報をあらゆる部署から集め虐待の有無を徹底的に確かめる必要がある」などとする提言が盛り込まれています。
これについて、委員長を務める、日本福祉大学の加藤幸雄学長は、記者会見で「手がかりを得ていたのだから、きちんと対応していれば事件を防げたかもしれない。豊橋市だけでなく、全国の自治体が共有するべき課題だ」と述べました。
愛知県では、この報告書を国や全国の都道府県などにも配布することにしています。
<以下引用>
豊橋育児放棄、市検討会議が報告書
2013/3/28 中日新聞愛知県版
豊橋市のアパートで昨年九月、四歳の女児が衰弱死した事件で、市は二十七日、再発防止策を検討する四回目の会議を開き、育児放棄の可能性のある児童の情報を一括管理するなどの対応策をまとめた。同日中に報告書を県に提出し、二十八日に公表する。
会議は市の関係部署や医師、警察官らで構成。遅れて提出された出生届や妊娠届の取り扱い、就学時健康診断未受診者への学校や教育委員会の対応など七つの課題をまとめた。
対応策では、乳幼児健診の未受診者にはこれまで地区担当の保健師が個別に対応していたが、育児放棄が疑われる家庭の台帳を作成し、保健師を二人増員して経過管理する。地域の見守り強化のため、主任児童委員を八人増員し、生後三~四カ月の乳児を家庭訪問してもらう。
所在不明児童については情報を児童虐待の担当課が集約し、新たに構築する情報管理システムで一元管理する。担当課の情報を基に再調査しても所在を確認できない場合、児童相談所などへ通告し、一連の対応マニュアルも作ることなどを盛り込んだ。(曽布川剛)
(春之介のコメント) 報告書はどこに・・・!?
さて3月末で検討会議も終えてNHKや中日新聞は報告書を配布や公表と記していた。
それで愛知県のHPを連日注視していたのだが、さっぱり分からない。
加えて愛知県は、過去記事をどんどんと消去する悪い癖があり過去の関連も分からない。
このブログへの同件についての検索も多く、多くの関係者や県民が注目している。
私なりに、さらにネット上で調べていたところ、豊橋市のHPの中に報告書が置かれていることが判明した。
記者発表には書かれておらず、通常の更新に記されたようだ。
この豊橋市の報告書は、以下から見ることができる。
ところが、それでは愛知県が設置した検討委員会の報告書もあるのではないか!?と思ってしまった。
そこで、さらに記事を調べてみると、豊橋市と愛知県が共同して検討会をしているらしいが、その関係性がまったく分かりにくい。
東愛知新聞というメディアに、豊橋市には
「4歳児死亡事例検討会議」(19人構成)という組織を作った。
その検討会議が県の
「児童虐待死亡事例等検証委員会」(6人構成)との合同検討会を持っていることは記されている。
では県の検証委員会は何をやったのだろうか!?
そこで、さらに考えてみたら「「県社会福祉審議会児童福祉専門分科会児童措置審査部会」に検証委員会を設置し、豊橋市と共同で同委員会を開催する」という一文を見つけた。
つまり県の審議会の分科会内にできた検証委員会であり、独立した組織ではなかった。
豊橋市の検討会議の内容について、アドバイスするだけの立場ということなのだろう。
ただNHKの記事では、別に県の検証委員会が報告書をまとめて、県が報告書を出して全国に配布とある。
つまり二つの報告書が出るのだろうか(現時点で、愛知県のHPにはどこにも何もない)。
もっと細かく見てみたら、こうだ。
3/22のNHK名古屋の報道は、愛知県の検証委員会会合を取材したもので、県は、この検証委員会の報告書を作って、全国の都道府県に配布する。
3/28の中日新聞の報道は、豊橋市の検討会議を取材したもので、市は、この報告書を県に提出し3/28に公表する。
あ~やっと、少し分かってきた。
結論として、県の検証委員会報告書は、とりあえず関係者配布であり公開されないかもしれない。
豊橋市の検討会議報告書は、市のHPで公表することで終わり。
最後まで分かりにくいのは、これら一連の会合は全て非公開なのだ。
この問題の核心は、福祉・医療問題で噴出している行政組織内での縦割りの弊害である。
一人の住民に対して、さまざまなサービスがなされているが、それを一元的に把握することができず、情報共有をしない・できない体制からの脱却が必要なのだ。
私が期待していたのは、中立的な視点で検証するのが県の検討会議の役割だと思っていたのだが、県の審議会内の組織として、あくまでも県の立場を示すためのものだったことだ。
有識者だけで組織された理由もこれではっきりとする。
豊橋市の検討委員会報告書に審議の流れが書かれてあった。
なお、こうしたことを踏まえて言えば、愛知県と豊橋市のHPに、それぞれ同一のHPを設けて審議過程と報告書の検索が可能とするくらいのことができないのだろうか。
全国ニュース扱いとなり、これほど児童虐待が話題となっている時期だけに、愛知県がきちんとした検証と対策を提示することが求められるだろう。
個人的には、こうしたことが行政組織の縦割りそのものなのだ。
私のように、時間をかけて調べて推測しないと分からないということだ。
もっと別の視点で言えば、これから公判となる裁判経過、検察と弁護側の主張、また、もっと違った本当の第三者による調査などできることはある。
これほどにこだわる理由は、豊橋市の行政組織だけの問題でなく、全国のどこでも起きる問題であるからだ。
事件があったからこそ、有効な方法を提示し実践し、その過程を時間をかけて豊橋市で公表することが求められる。
それができないから、また同様の事件が起きるのだろう。
<以下参考> 豊橋市の動き
①専門家交え再発防止検討 来春までに対応策まとめ・豊橋市初会合
女児衰弱死事件
2012/10/6 東愛知新聞
豊橋市神野新田町で起きた女児衰弱死事件を検証、再発防止策を考える「4歳児死亡事例検討会議」(会長=井口健二・市福祉部長)の初会合が5日、同市役所で開かれた。子育て、教育を担当する部署だけでなく、住民情報を持ち合わせる部署、医師などの専門家が委員となった。
来年春までに対応策をまとめ、県が設置する「児童虐待死亡事例等検証委員会」に報告する。
検討会議は委員19人で構成。市の健康政策、子育て支援、こども保健、学校教育など7課の課長と担当職員に、専門家として医師や、警察、児童相談所の関係者、小児看護専門大/学教授を加えた。
市の市民税、市民両課も検討会議に入っており、税や住民票、戸籍などこれまで照合していない情報についても入手のための手続きや情報共有ができるかを探る。
事件を受けて市は、女児に対して3歳児検診の受診を呼び掛けるハガキを送付、連絡が取れずに未受診だったのにもかかわらず、女児の家族から現況届が提出されて児童手当を支給していたことなどを報告した。
井口会長は「行政として何ができたのか、特異なケースを想定して危機管理意識を共有することが必要。従前の対応にとらわれずに検討したい」とあいさつした。
会合は原則非公開。今後は事件に直接関係していた部署での内部検証で課題を洗い出し、専門家の委員からアドバイスを受ける。
来年3月末までに報告書をとりまとめるという。(安藤聡)
②情報共有システム構築 再発防止へ対応策まとめ
豊橋市4歳児死亡事例検討会議
2013/03/28 東愛知新聞
昨年9月に豊橋市神野新田町で起きた女児衰弱死事件の再発防止策を考える、豊橋市設置の「4歳児死亡事例検討会議」(会長=井口健二・市福祉部長)の最終会合が27日、同市役所で開かれ半年間かけて検討してきた対応策をまとめた。
衰弱死事件では、関係各課がそれぞれ乳児健診、子ども医療、児童手当、生活保護などの情報を把握しながら、情報を共有する仕組みがなかったことから、虐待の早期発見につなげられなかった。
市の検討会議は今回も含めて4回開かれ、これまでに新たな対策として乳幼児健診や小学校就学児健診を受診していない乳児や児童を児童の一覧を担当課で作成することなどが決まっている。
そのうえで、所在が把握できなかった乳児、児童については子育て支援課が所管する要保護児童対策ネットワーク協議会にはかって所在確認を行い、場合によっては警察にも協力を求める。
子育て支援課は新年度から1年かけて各部局間の情報共有システムを構築し、情報集約から通報までの対応に関するマニュアルも作成する。2014(平成26)年度から本格運用できるように整える。
ほかにも、保健師の訪問記録の記載内容の見直し、児童虐待が疑われる家庭への専任保健師の派遣などが決まった。
これら対応策は、今回の事件について、市とは別に「虐待死亡事例等検証委員会」を設置した県にも送付し参考にしてもらう。(川口直康)
<以下参考>
豊橋市4歳女児死亡事例検討報告について
豊橋市4歳女児死亡事例検討会議
豊橋市では、平成24年9月に市内で発生した育児放棄による4歳女児死亡事例を真摯に受け止め、本市の関係機関による内部検証を行うため「豊橋市4歳女児死亡事例検討会議」を設置して検討を重ねてきましたが、このたび検討報告書をまとめましたので、公表します。
この検討報告書は再発防止に向けた本市独自の具体的な対応策をまとめたもので、今後は検討報告書の内容に沿って、児童虐待防止の強化に向けて取り組んでまいります。
・
豊橋市4歳女児死亡事例 検討報告書 PDF
豊橋市4歳女児死亡事例検討会議 平成25年3月
<以下参考エントリー> 事件の経過
ネグレクト(育児放棄)で4歳女児が死亡① 両親を逮捕 母親には准看護師資格 愛知県豊橋市 ⇒起訴へ