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札幌市に24時間在宅介護を求めた重度身障者・34歳男性の請求を退ける 札幌地裁判決

「福祉制度には限界」24時間介護訴訟
2012年07月24日 朝日新聞北海道版

■原告訴え退ける 札幌地裁判決
 札幌市東区の重度心身障害者鬼塚朗さん(34)が、市の介護給付審査基準は違法だとして、24時間介護を市に求めた訴訟で、札幌地裁(千葉和則裁判長)は23日、鬼塚さんの訴えを退ける判決を言い渡した。市側の主張が認められ、鬼塚さんは控訴する方針だ。

 札幌市は、24時間介護を認めるのは、進行性筋萎縮症により常に人工呼吸器を使用しているなど、「24時間介護をしなければ真に生命の危険があり、他の福祉サービスとの併用が困難な場合」に限定。鬼塚さんの場合は当てはまらず、月330時間(1日11時間)の介護と短期入所との組み合わせで、生命、身体の安全は保てるとした。また、24時間介護をすれば、市の年間負担は約1690万円以上になり、財政が厳しくなっていることから基準は妥当としていた。

 これに対して鬼塚さん側は「24時間介護が受けられなければ、長年の夢だった地域での自立した生活をあきらめざるをえない」と主張していた。

 判決は「地域社会の生活をしたいという原告の希望はできるだけ尊重される必要がある」としながらも、「財政的な裏付けが必要で、福祉制度には限界がある。330時間の支給でも、例えば月曜日から金曜日の日中は介護を利用し、他は短期入所することで一応自立した社会生活を営むことは可能」などとした。

 鬼塚さんの代理人弁護士は「到底納得できない。控訴したい」としている。札幌市は「市の主張が認められたものと理解している」とのコメントを出した。

(春之介のコメント)
和歌山ALS訴訟を受けて、今後の障がい者自立支援に司法がどのような判断をするのか注目される。

この判断では、札幌市の主張を支持し原告の請求を退けた。

ALSと他の疾患で、区別されることをどのように考えていくかだろう。

日本の生存権保障は、際限なく認められているわけではない。

こうした要求の確立には国民の意識を高めていくしかなく、司法はそれを追認するのが現実的なことになる。

国は、盛んに自助・共助・公助という掛け声をあちこちで主張し、国の関与を最小限に抑えようとしている。

問題は、自助ができなくなったら共助へ、そして公助は最後の手段と考えて、ウエートを個人の責任に負わせていく仕組みを作りたいという思惑だ。

今回も、自助ができないとまでは言えないということだろう。

生存権とは、健康で文化的に生きる権利を憲法は掲げているのだが、それは制約があるという運用上の考え方による。

提起した彼の問題だけにとどまらず、多くの障がい者やマイノリティに、どのような権利を保障するのかという難しい問題となる。

財政上の制約もあるだろうが、これも国民生活とのバランスの問題であり、理解がなければ進まないといえる。


<以下引用>
◆24時間在宅介護 男性の請求退ける 札幌地裁判決「11時間まで」支持
 2012/07/23 北海道新聞

 最難治性てんかんや手足のまひのため、障害者自立支援法に基づく重度訪問介護サービスを受けている札幌市東区の鬼塚朗(あきら)さん(34)が24時間の在宅介護を求めた訴訟の判決が23日、札幌地裁であった。千葉和則裁判長は、1日当たりの介護サービスを11時間までとした市の決定を妥当と認め、鬼塚さんの訴えを退けた。

 鬼塚さんはアパートで1人暮らしだが、生活全般で他人の助けが不可欠なため24時間介護が必要として、2009年に提訴した。札幌市の規定によると、重度訪問介護サービスのうち24時間介護は進行性筋萎縮症で常に人工呼吸器を使用している人など病態別に二つのタイプに限られ、鬼塚さんは該当しない。

◆24時間介護求めた訴え退ける
 2012年07月23日 NHK札幌放送局

体にまひがあり、車いすで生活している札幌市の男性が、市を相手取って24時間の介護サービスを求めていた裁判で、札幌地方裁判所は23日、男性の訴えを退ける判決を言い渡しました。

この裁判は、脳梗塞などが原因で手足にまひがあり、車いすで生活している札幌市東区の鬼塚朗さん(34)が「重い障害があるのに市が訪問介護を1日11時間しか認めないのは不当だ」として24時間の介護サービスを求めていたものです。

23日の判決で札幌地方裁判所の千葉和則裁判長は、市が24時間介護の対象を、常に人工呼吸器を使う人などに限定していることについて「制度には予算の裏付けが必要であり、こうした基準は適法だ」と指摘しました。

そのうえで「原告は、自宅で24時間の介護を受けなくても、施設への短期入所なども利用すれば、自立した生活が可能だ」などと述べ、訴えを退けました。

判決のあと、鬼塚さんは会見し、「判決は許せない。これからが勝負だと思っている」と話し、控訴する意向を示しました。

また判決について札幌市の上田文雄市長は「これまでの市の主張が認められたと理解している」というコメントを出しました。
by negitoromirumiru | 2012-07-25 07:40 | 福祉 | Comments(3)
Commented at 2012-08-04 07:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by negitoromirumiru at 2012-08-04 10:59
yuki男 さま

コメントありがとうございました。

ブログ記事も読ませていただきました。私も、ご意見に賛同いたします。

私の考えでは、社会的な問題すべてはバランス上の問題であるので、少数者の権利を達成するには、多数の権利が達成していなければ難しいでしょう。

つまり社会的常識となっていることなら裁判所も認めざるを得なくなります。

高齢者・障がい者となったなら自分自身も24時間介護サービスを受けたいと、国民の多くが当然のことと思う社会であれば、理解・共感を受けることでしょう。

また『足るを知る』ことができる人たちがいる一方で、それができない人たちも多数存在するのが社会です。そこが難しいところです。

一歩離れてみれば、人間としての常識に欠ける人、依存的に生きることに慣れてしまった人、ごり押しすれば周りが処理してくれる人も存在しています。

権利を主張する人たちが何か嫌らしく思えるのは、その人たちが他の人たちの人権には配慮を払わないからでしょう。その目的が、自分のみの利益のためなのか、広く社会の人たちを含めたものなのかで大きく違います。
Commented by ゆう at 2016-02-09 16:04 x
自分は福祉のサービスを受けてるんですがこういった権利を主張してる方のおかげでおかしい扱いをされた時に自分もしていいんだと勇気をもらえます。
それと同時にどうやったら社会の余裕ができるのかもちゃんと考えたほうがいいと思います。
日本はほとんどの資源を外に頼ってますからそれが無くなれば障害者に対する福祉に回る余裕も無くなってしまうかもしれませんし


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