「良い教育」の一例 放送大学 井上晃宏
2010年2月20日 アゴラ
「良い教育」が、受験勉強をしなくても受けられる実例を示したい。
放送大学という通信制大学がある。教養学部だけの単科大学だ。修士のみだが、大学院が併設されている。
入学試験はないが、講義の水準は高い。各分野のトップレベルの人材に、時間と場所の制約なしで講義させるのだから、当然である。テキストもよくできている。
学費は安い。卒業までにかかる学費は70万4000円だ。テキスト代は学費に含まれている。国公立大学よりも安いのだ。
ここの講義は、地上放送、ケーブルテレビ、スカパーのどれかの設備があれば、在学者でなくても無料視聴できる。テキストブックは一般書店で誰でも買える。入学しなくても、教育内容を確かめることができる。一般大学が行うオープンキャンパスとは、透明性のレベルが違う。試しに講義を視聴した上で、入学するかどうか決めればいい。
中退率は高い。科目履修生を含めて延べ110万人が入学して、卒業生は、わずか5万人しかいない。単位認定が、世間の大学よりは幾分厳しいらしい。
放送授業に出席点なんてないから、寝ている学生、内職をしている学生は原理的に存在しない。純粋に知識を得るためだけに講義を受ける。講義がくだらないと思ったら、テキストを読んで自習したっていい。誰も強要はしない。
取れる資格は、「学士(教養)」以外はない。他の資格を取る上で必要な単位の一部を取得することはできるが、不十分だ。しかし、実利が伴わないからこそ、ためにする学問ではなく、それ自体を目的とした学問を落ち着いてやれるのだ。
金がなくても、仕事をしながらでも、障害があって容易に移動できなくても、一流の教育を受けることができる。
ここでは、いわゆる大学生活を楽しむことはできない。しかし、学問を楽しむことはできる。
(春之介のコメント)
極めて難しいのが通信教育だ。
この卒業生の数字を見て愕然とした。
世の大学では、よほどのことがない限り卒業させるのが当然とされている。
通信教育では、自己学習が基本となり動機があり意欲がないと続けられない。
この卒業生も4年で卒業した人ばかりではないだろうね。
首都圏では地上放送でも見られるし、テキストは大手書店に完備しているところもある。