実績ない民間会社が保管へ 破綻バンクの臍帯血 1500人分 利用者から不安の声
2010年1月12日 共同通信社
白血病治療などに使われる臍帯血(さいたいけつ)を個人から有料で預かる民間バンク「つくばブレーンズ」(茨城県つくば市)が経営破綻(はたん)し、同社が預かっている約1500人分の臍帯血が、保管事業の実績がまったくない埼玉県戸田市の民間会社の管理下に置かれる見通しとなったことが、9日、関係者の話で分かった。
破産管財人がこの会社と保管を委託する契約を結んだため。民間バンクの破綻は全国初で、臍帯血を預けている契約者からは「適切に扱ってもらえるのか」と不安の声が出ており、厚生労働省は「事実関係を確認したい」としている。
管財人が保管委託契約を結んだ会社は「臍帯血保管センター」(再生医療技術センターから社名変更、篠崎庸雄(しのざき・つねお)社長)。「臍帯血を使用した再生医療の研究」などを目的に戸田市の不動産会社社長らが昨年2月に設立したが、臍帯血バンクとしての活動実績はない。同社は昨年7月、債権者としてつくば社の破産を申し立てている。
篠崎社長は共同通信の取材に対し、「今後は戸田市内に建設中の専用施設に臍帯血を移す。当面は臍帯血の保管だけを行うが、施設の設備が整えば新規の預かりも検討したい」と説明。臍帯血は現在、つくば社の専用施設で凍結状態で保管されているが、施設が競売に掛けられるため、3月末ごろまでに移す必要があるという。
関係者によると、つくば社が保管する臍帯血のうち約千人分は契約者から直接預かったもので、残る約500人分は研究用など。長男の臍帯血を預けている埼玉県春日部市の主婦は「新たな引受先に関する情報がないので、どうすればいいか分からない。できれば実績のある民間バンクに預けたい」と話している。
厚労省の担当者は「つくば社の件は情報収集に着手したばかりで、今後、詳しい事実関係を確認したい」としている。
臍帯血は赤ちゃんのへその緒や胎盤から採取される血液で、血液のもととなる造血幹細胞が豊富に含まれており白血病治療などに使われる。保管方法はバンクによって異なり、つくば社の保管料は10年間で約30万円だった。
※臍帯血(さいたいけつ)バンク破綻(はたん)問題
個人向けに臍帯血の保管事業を手掛けている茨城県つくば市の民間バンク「つくばブレーンズ」が昨年10月、水戸地裁土浦支部から破産手続きの開始決定を受け、預かっていた1500人分の臍帯血が一時、行き場を失う事態となった。民間バンクの経営破綻は全国初で、負債総額は約7億円。これを受け、厚生労働省は全国に数社ある民間バンクの経営実態に関する調査に乗り出している。