三重大学附属病院で医療ミス
2018年09月29日 NHK三重放送局
ことし3月、津市の三重大学医学部附属病院に入院していた当時1歳の女の子が、治療中に必要な量の5倍から7倍のインスリンを投与され、健康への被害が出ていることが分かりました。病院側は医療ミスだったとして家族に謝罪しました。これは28日、三重大学医学部附属病院が会見して明らかにしたものです。
それによりますと、ことし3月、県内の当時1歳の女の子の血中のカリウムの値を下げるためインスリンとブドウ糖液を混ぜて4回にわたって点滴をしましたが、4回目の点滴の途中で容体が急変したということです。病院が4回目の点滴を調べたところ、インスリンが予定していた量の5倍から7倍程度だったことがわかったということです。
女の子の命に別状はありませんでしたが健康被害が残ったため、現在も治療が続いているということです。病院によりますと、4回目の投与の際、看護師が専用の注射器を使わず正確なインスリンの量を測らなかったことなどが原因と見られるということです。病院はことし3月、女の子の家族に経緯を説明し、謝罪しました。
三重大学医学部附属病院の伊藤正明病院長は「患者とご家族に多大なご迷惑をおかけし、おわび申し上げます。安全管理が不十分であったことを重く受け止め、再発防止の取り組みをさらに強化します」と述べました。
(春之介のコメント)
共同通信社配信記事が、「専用の注射器を使っていなかったほか、2人ですべきだった投与量の点検を1人でしていた。」と、より詳しい。
さらに病院側が、原因と対策を公表し、すでに対策を実施している。
医療事故が起きたのは今年3月と、ずいぶんと時間が経過しているが、被害を受けた方との話し合いも終えての公表となったのだろう。
幸いにして女児の生命に危険はなく済んだようであるが、同様な事故が多発していることで、これはマニュアル整備や形ばかりの確認では対応できない事案のようである。
なおプライバシーの配慮のためか、女児の詳細は分からず、かつ、事故を起こした看護師らのことも明かしていない。
看護師の個人的な技量の問題なのか、性格的なことなのか、それとも以前に別病院であったように職場の人間関係の問題も絡んでいるのか、何かあっさりとした分析にも思えるのだが。
ただ、二度と同じ過ちは起こさないという姿勢を、職員が持てるならば、それに越したことはないだろう。
ちなみに、記者会見は3人の男性が出席していた。伊藤正明病院長と副病院長(医療安全担当)、そして事務長だろうか。
看護部長(三重大学医学部附属病院 副院長)はいなかった。
<以下参考>
三重大学医学部附属病院 https://www.hosp.mie-u.ac.jp/
三重大学医学部附属病院 看護部 http://www.hosp.mie-u.ac.jp/nurse/
三重大学医学部附属病院において発生したインスリン過量投与事故と再発防止について(PDF)
平成30年9月28日
http://www.hosp.mie-u.ac.jp/wp-content/uploads/20180928.pdf
さらに、インスリンはハイリスク薬であるので、調製(秤量・混注)時には
厳しい手順でのダブルチェックを求めています。一般の薬剤であっても調製時
は看護師 2 名によるダブルチェックを行いますが、調製前に 2 名が別のタイミ
ングで確認することも可としています。しかし、インスリンを調製するときは、
調製時にリアルタイムで同時に 2 名の看護師によって確認する手順となってい
ます。本事例は調製前にはダブルチェックは行われていましたが、リアルタイ
ムに調製時には行われていませんでした。本来 2 名の看護師で確認しながら行
うべき、インスリンをブドウ糖液に混注するという作業を 1 名で行っていたと
いうことになります。
再発防止への取り組み
次いで、インスリンの調製には専用注射器を用いること、調製時にリアルタ
イムでのダブルチェックを行うこととの手順の遵守徹底を図りました。
遵守徹底のための環境整備として、①インスリン製剤と専用注射器は病棟内
の同じ場所に配置すること、②ダブルチェックを行う調製者、確認者の2人の
名前を明記する専用シールを新たに作成し、インスリンが混注されている点滴
バッグや注射器に貼付する、の2点につきましては、すでに施行しています。(抜粋)
<以下引用>
女児にインスリン過剰投与 三重大病院
2018/9/28 日経新聞デジタル
三重大病院(津市)は28日、今年3月に三重県在住の1歳女児にインスリンを過剰投与する医療ミスがあったと発表した。専用の注射器を使っていなかったほか、2人ですべきだった投与量の点検を1人でしていた。
女児は現在も同病院などで治療中。病院側はミスの判明後、家族に経緯を説明、謝罪した。「プライバシーに配慮してほしい」と要望を受けたとして、詳しい容体や後遺症の有無については明らかにしていないが、命に別条がない状態まで回復したという。
病院によると、女児は手術を受けた後、血中カリウム値が上昇したため、病院はブドウ糖液にインスリンを加えた点滴を開始した。4回目の点滴中に容体が急変し、血液検査で低血糖状態になっていることが判明。残りの点滴を調べたところ、予定した5~7倍のインスリンが含まれていたことが推定される。
病院ではインスリンを投与する際、専用の注射器を使い、分量が正しいか看護師2人で点検する規則だったのに、4回目では看護師1人が専用のものより容量が大きく、目盛りも異なる注射器を使用。この看護師は、専用の注射器でなくても問題なく計量できると認識していたとしている。
伊藤正明病院長は記者会見で「患者さん本人やご家族らに多大なご心痛、ご迷惑を掛けたことを心よりおわび申し上げる」と謝罪した。〔共同〕
<以下関連>
インスリン1単位を「1mL」と誤解、100倍量の過剰投与する事故が後を絶たず―医療機能評価機構
2017年10月16日 メディ・ウオッチ
https://www.medwatch.jp/?p=16282
<以下関連エントリー>