昨年の警察職員の懲戒高止まり 30歳未満と重い処分増加
2012/01/26 共同通信
昨年1年間に戒告以上の懲戒処分を受けた警察職員は前年より18人減の367人で、依然、高止まりの傾向にあることが26日、警察庁のまとめで分かった。最も重い免職とそれに次ぐ停職を合わせた割合や30歳未満の処分者は増加している。
警察不祥事を機に警察改革が始まった2000年以降、処分者は漸減したが、一昨年に急増。警察庁は「全体数は減ったが、内容の重いケースが多く憂慮すべき状況だ。警察改革以降の厳しい時代を経験していない若い職員に多いことも心配している」としている。
367人のうち、不適切な行為や犯罪に関与した職員は347人で、部下の監督責任を問われた職員は20人。
(春之介のコメント)
マスコミは警察官の犯罪を細かく報道するので、かなりの数の処分があるものと思っていたが347人が多いのか少ないのかは判断しずらい。
全体職員に占める割合で判断すべきかもしれないし、内容で判断すべきかもしれない。
追記
以下の産経記事は、掘り下げて警察改革の実行性と、監察制度の問題点を指摘している。
懲戒処分を受けるのは、事件が公に発覚したものであり水面下では警察官のプロとしての自覚・能力欠如は進んでいるだろう。
いくら監察組織を強化しても、それは事件後の対応であり、警察そのものが抱えている諸問題を変えることしかないと分かっているが進まない。
彼らには仕事のオンやオフは残念ながらないし、オフの時にも警察官としての自覚を持つことが必要だろうし、それが国の治安維持というものだろう。
テレビドラマではないが、犯罪は現場で起こるゆえに働きやすい仕組みを本気で作るしかない。
<以下追加引用>
不祥事続発で懲戒処分後絶たず 警察改革、効果に陰り
2012年5月13日 産経ニュース
警察官の不祥事が止まらない。警察庁によると、今年1~3月の懲戒免職者数は既に12人に上るほか、旧態依然とした組織的隠蔽(いんぺい)がいまだに行われていたことも発覚。不祥事根絶どころか、警察組織全体の意識の緩みを危惧する声も出ている。焦燥感を募らせる警察庁は、「警察改革の精神」の徹底に向け、施策の検討に乗り出した。
◆いまだ組織的隠蔽
「明らかに時代の流れに逆行している」。警察庁幹部がこう批判するのは、静岡県警の松嶋勝己・前磐田署長=犯人隠避容疑で書類送検、懲戒免職=をめぐる部下の不祥事隠しだ。
松嶋前署長は平成22~23年、当時の副署長らに指示し、(1)20代巡査の詐欺(2)20代巡査の窃盗(3)40代警部補の盗撮-の各事件を捜査せずに3人を依願退職させ、本部に「一身上の都合」と虚偽の報告をしていた。
1年足らずに1つの警察署で3件もの不祥事が連続するのも驚きだが、いまだに組織的な不祥事隠しが行われていたことは由々しき事態といえる。
警察庁幹部はこう言う。「かつては『辞めさせて幕を引く』という形で不祥事を隠すことがよくあった。しかし、平成12年に始まった警察改革以後は不祥事を調査・捜査し、責任の所在を明確にした上で必要な処分を行っており、今回の事案は極めて悪質だ」
◆職務絡みも目立つ
札幌・ススキノのSMバーで全裸になっていた北海道警巡査長、「買うのがもったいない」とアダルトDVDを万引した富山県警巡査長、警察手帳を偽造した徳島県警の巡査部長…。
今年に入ってから、不祥事は枚挙にいとまがないが、深刻なのは職務に絡む不祥事も目立つことだ。
年末から年始にかけ、警視庁ではオウム真理教元幹部が本部に出頭してきた際に“門前払い”したり、大阪府警でも警察官が飲酒検査でアルコール濃度の数値を水増ししたりした不祥事が発覚した。
また、長崎県の2女性殺害事件に絡む千葉県警習志野署員の“旅行問題”や、京都府で小学生ら10人が死傷した交通事故に絡む被害者情報の無断提供など不祥事が途切れることはない。
◆1~3月免職12人
警察庁によると、23年中の全国警察の懲戒処分者数は前年比18人減の367人(免職45人、停職83人、減給123人、戒告116人)。今年1~3月の免職は既に12人で、このまま推移すると昨年1年間とほぼ同数となり、不祥事に歯止めがかからない状況だ。
懲戒処分者数は警察改革元年の12年以降、減少傾向だったが、
22年に急増後、23年もほぼ同数で高止まっている。
警察庁は不祥事の続発を受け、4月下旬に「『警察改革の精神』の徹底等に向けた総合的な施策検討委員会」(委員長=金高雅仁官房長)を設置。各局の筆頭課長ら幹部二十数人で議論し、7月をめどに不祥事根絶に向けた新たな施策を取りまとめるという。
■根底に気の緩み
元警視庁捜査1課長の田宮栄一氏の話「
不祥事の根底には、自由度が増した世の中の風潮に警察官も浸り、『少しくらい許される』という気の緩みがあるのではないか。組織は脆弱(ぜいじゃく)化の一途をたどり、まさに危機的な状態だ。根本的な幹部の意識改革や教育制度を見直さない限り、不祥事は止まらないだろう」
【用語解説】 警察改革
平成11~12年、神奈川県警の覚醒剤使用もみ消し事件や、監禁事件の被害女性が保護された当日に新潟県警の幹部らが興じた「雪見酒問題」など、不祥事が相次いで発覚した。一連の不祥事を受け、懲戒処分の指針制定▽改正警察法公布▽懲戒処分の発表の指針制定-など不祥事根絶に向けた警察改革の枠組みが整えられた。
公安委の監察指示、8年間ゼロ
平成12年に始まった警察改革を受け、警察庁は監察体制を強化しているが、不祥事が続発している現状を考え合わせると、適正に運用されているかどうか疑問符がついている。
「警察改革の精神である『自浄機能の強化』のまさに中核を担っている」。警察の監察部門が果たす役割について、警察庁の片桐裕長官はこう位置づける。
警察改革以降、警察庁では首席監察官以下を6人から22人に、管区警察局でも計25人から計125人に監察部門を増員。組織内部での発言力と独立性を高めるため、全国の警察本部の首席監察官についても16年度までに、任命権者が国家公安委員会である地方警務官(警視正)に格上げした。
警察庁と管区警察局が、全国の警察本部を対象に行った監察の実施回数は、22年度で2116回に上り、12年度と比べて約3・5倍にまで増加している。
一方、警察改革に向けた議論では、公安委員会の形骸化も指摘。改正警察法で管理機能の充実・強化を図るため「公安委員会による監察の指示」が新たに規定され、公安委員会が警察の監察状況を厳正にチェックし、具体的に監察を指示できるようにした。
しかし、これまでに出された監察の指示は、幹部と私企業との違法な関係や不適正な予算執行などを踏まえ、13年に神奈川と奈良、16年に北海道と福岡の各公安委員会からの計4件にとどまる。
最後の監察の指示が出されて以後、8年間は1件の指示も出されていない。
【用語解説】 警察の監察部門
全国の警察本部では首席監察官のもと、警察の能率的運営と規律保持に向け、毎年度、監察実施計画を作成して監察を実施している。「警察の警察」として、監察部門の警察官は身内の服務規定違反や犯罪行為などについても調べる。