卵巣摘出はガン予防の利益よりも健康への悪影響の方が大きいとする研究 閉経前女性は慎重に

[医療解説] 卵巣摘出… がん予防目的 閉経前慎重に
2011年7月28日 読売新聞

 子宮筋腫などの手術の際、がん予防の目的で卵巣の摘出が行われていることについて、閉経前の女性では更年期障害や骨粗しょう症などのマイナス面が大きいとして、見直す動きが出ている。(中島久美子)

 卵巣は子宮の左右にあり、エストロゲンなどのホルモンを分泌する。卵巣がんの早期発見は難しいことから、閉経後や、妊娠出産を終えた閉経間近の女性では、他の病気の手術時に一緒に摘出することがある。

 ところが、卵巣摘出はがん予防の利益よりも健康への悪影響の方が大きいとする研究が、米国で2005年ごろから相次いで発表された。

 米国人女性約3万人に対する24年間の調査では、両方の卵巣を摘出すると、卵巣がんによる死亡の危険性は0・06倍になった。エストロゲンが発症に影響する乳がんは、死亡の明らかな低下はみられなかったが発症は減った。

 しかし、卵巣を摘出した人は心筋梗塞や脳卒中が増え、がんを含めた全体の死亡の危険性は1・12倍高くなった。血管の老化や悪玉コレステロールの上昇を防ぐエストロゲンの働きが低下したためとみられる。年齢が若いほど影響が大きかった。

 米国産婦人科学会は、「卵巣がん・乳がんの遺伝的リスクがない更年期以前の女性には、正常な卵巣をなるべく保存するよう強く薦める」などの見解を出した。
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 米国での動きを受け、日本産科婦人科学会の小委員会(小委員長・倉智博久山形大教授)は10年、全国の専門医療機関(743施設)に、がん予防目的での卵巣摘出についてアンケート調査を行い、483施設(65%)から回答を得た。

 「基本的に行う」との回答が351施設(73%)あり、条件として「ある年齢に達し本人が希望した場合」(30%)が最も多かった。年齢も「50歳」(50%)、「45歳」(25%)と施設によって異なった。

 子宮がんや筋腫などの手術を受けた患者約4000人にもアンケートを行った。卵巣を両方とも摘出した人と、少なくとも片方温存した人を比較した。

 45歳以下で卵巣を両方摘出した女性は、温存した女性と比べ、調査した五つの病気(更年期障害、高脂血症、骨粗しょう症、高血圧、糖尿病)すべてが増えていた。46~50歳で卵巣を摘出した場合も、更年期障害、骨粗しょう症、糖尿病が、明らかな差はないものの増える傾向にあった。

 この結果から同委員会は11年6月、「50歳以下での摘出は慎重に判断するべきだ」との報告をまとめた。倉智さんは、「閉経後も卵巣はいくつかのホルモンを分泌している。50歳を過ぎても、卵巣摘出が健康にどのような影響があるか十分説明を受けた上で、判断してほしい」と説明する。

 卵巣を摘出した場合は、何に気をつければ良いのか。東京歯科大市川総合病院産婦人科教授の高松潔さんは、「薬でエストロゲンを補う方法もあり、まずは定期的に検査を受けて、骨や血管の状態を確かめることが重要」としている。

(春之介のコメント)
卵巣を全摘した場合の問題点であり、女性にとっては重要な決断を迫られること。

要らないならば切り取るという荒っぽい方法は、治療法としては変更を迫られる。

臓器がどのような影響を全身に与えているのかは不明な部分があるだろう。


<以下追加参考>
婦人科術後患者のヘルスケア(倉智博久 2013年2月 特別講演) PDFから
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日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会
「婦人科の術後患者へのヘルスケア」の実態調査に関する小委員会
委員長・倉智博久

倉智博久
2014年
山形大学医学部産婦人科学講座教授退任
2015年4月
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター病院長
2016年4月
大阪府立母子保健総合医療センター総長
2017年4月 (病院名称を変更)
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター総長


〈以下参考引用〉
子宮筋腫 月経量多く貧血 薬効かなければ摘出も
2011年9月20日 中日新聞 紙上診察室

Q 月経量多く貧血

 生理の出血量が多く、貧血に。子宮筋腫の診断を受けていますが、手術が必要ですか。 (女性・44歳)

A 薬効かなければ摘出も

 子宮筋腫は30歳以上の女性の20~30%にみられる良性腫瘍で、発生部位により粘膜下(子宮の内側)、筋層内、漿膜下(しょうまくか)(子宮の外側)に分類されます。

 代表的な症状は、月経量が多い▽月経痛が強い▽腫瘤(しゅりゅう)による圧迫?などで、部位により異なります。約半数は無症状で、経過観察をすることが多いですが、子宮内腔(ないくう)への圧迫が強いと月経量が多くなり、貧血がひどい場合には治療が必要です。

 薬物療法では、まず貧血を改善し、止血剤、漢方薬などで月経量の減少を図ります。また、偽閉経療法と呼ばれ、GnRHアゴニストというホルモン剤で月経を止めて筋腫を縮小させる方法もあります。この療法は骨量の減少といった副作用があるために短期間しかできず、治療の中止により筋腫は数カ月で元の大きさに戻ってしまいます。

 ご相談の女性は44歳ですので、閉経までにまだ長い期間がありますから、偽閉経療法を繰り返し行うのは副作用の問題から望ましくありません。

 薬物療法で改善がみられなければ、最終的に手術を選択します。通常、子宮全摘術が多いですが、粘膜下筋腫では子宮鏡を用いて筋腫を摘出する方法があります。筋腫の大きさや部位によっては、開腹手術よりも傷が小さく、体に負担の少ない腹腔(ふっこう)鏡手術が可能な場合もありますので、主治医とご相談ください。
(名古屋市立東部医療センター産婦人科部長・村上 勇氏)

〈以下追加引用〉
7時間以上の睡眠で卵巣がんリスク低下- 国立がん研究センター
2011年11月07日 キャリアブレイン

 国立がん研究センターはこのほど、「7時間以上の睡眠は、卵巣がんのリスクを下げる可能性がある」との研究結果をまとめた。

 国内に住む40-69歳の女性約4万5700人を対象に、1990-94年から2008年まで追跡調査した多目的コホート研究のデータを分析。出産回数やBMI、喫煙や運動習慣などと、卵巣がんの発症リスクとの関連を調べた。平均約16年間の期間中、86人が上皮性卵巣がんを発症した。

 分析結果によると、日常の睡眠時間が7時間以上のグループは、6時間未満のグループに比べ、卵巣がんの発症リスクが0.4倍と低かった。また、多くの先行研究で知られている出産歴との関連では、出産回数が1回増えるごとに、リスクは0・75倍に減少する傾向が見られたという。

 同センターの研究班は、「睡眠時間との関連はこれまで報告されておらず、今後の検証が必要」とした上で、「普段の睡眠時間が長いことが、卵巣がんのリスクを下げる可能性がある要因として示された」と指摘している。

<以下関連引用>
内視鏡手術、ガンまき散らす恐れも…子宮筋腫
2014年5月22日 読売新聞

 子宮筋腫の内視鏡手術で、病変に肉腫などのがんがあった場合、筋腫を切る器具ががんを腹部内でまき散らし、悪化させる恐れがあることが分かった。

 日本産科婦人科内視鏡学会(吉村泰典理事長)は21日、手術前の検査で悪性の疑いを除外してから、この器具を使うなどの注意点をまとめ、公表した。過去に手術を受けて心配な女性には、実施した医療機関への相談を呼びかけた。

 問題となったのは、腹部に開けた1・5センチ程度の穴から挿入、筋腫を切り刻む器具。国内では年間約1万件の手術で使われている。

 米食品医薬品局は今年4月、この器具の使用を勧めないと通知した。子宮筋腫手術で摘出した病変から肉腫が見つかる頻度は0・3%と推計される。通知の影響で最も普及している米国製の器具の販売が中止になった。国内の多くの施設では、この器具を使わず、穴を数センチに広げて病変を摘出するなどの手法に切り替えざるを得ない状況だという。同学会は今後、筋腫に肉腫が見つかる頻度など国内の実態調査を行う。

<以下関連引用>
卵巣がん転移の仕組み解明=小胞が腹膜破壊-国立センター
2017/02/28 時事通信デジタル

 国立がん研究センターと名古屋大は28日、卵巣がんが腹膜に転移する仕組みを解明したと発表した。がん細胞から分泌された微細な小胞「エクソソーム」が腹膜の細胞を破壊し、転移を促していた。論文は英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載される。
 
 卵巣がんは自覚症状が乏しく、腹膜にばらまかれたように転移が広がる腹膜播種(はしゅ)になった段階で見つかることが多い。国内では毎年約1万人が発症し、約5000人が死亡しており、研究成果が早期発見や治療法の確立につながることが期待される。
 
 研究グループによると、細胞はさまざまなたんぱく質やリボ核酸(RNA)などを含むエクソソームを分泌し、他の細胞とやりとりしている。今回の研究で、卵巣がん細胞のエクソソームが腹膜に付着して穴を開けることが分かり、原因となる遺伝子も特定した。
 
 がん細胞のエクソソームは腹水にも含まれており、経過観察の重要な情報となるほか、除去することで転移の予防も期待できるという。
 
 記者会見したがんセンター中央病院の加藤友康・婦人腫瘍科長は「腹膜播種の制御は治療の要で、突破口を開いたと期待している」とコメントした。

<以下参考>
卵巣がんの治療を困難にする腹膜播種性転移のメカニズムを世界に先駆け解明
新たな治療標的かつバイオマーカーとなりうるエクソソームを同定


2017年2月28日 プレスリリース
国立研究開発法人国立がん研究センター、国立大学法人名古屋大学、国立研究開発法人日本医療研究開発機構
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by negitoromirumiru | 2011-11-07 17:56 | 医療 | Comments(0)


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