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院内暴力・暴言などの対応とは!? 看護学生の6割が、患者からの暴力を経験 2007年実態調査から

調査:看護学生の6割が、患者からの暴力を経験
2011年8月22日 毎日新聞

 看護学生が実習中に患者から受けた暴力の実態を、筑波大の江守陽子教授(看護科学)らの研究チームが調査した。学生の6割が暴力を受け、うち性的暴力が精神的暴力と並んで4割を超えていた。日本看護協会の調査では看護職員への暴力は約3割とされ、学生は2倍もあった。看護学生への暴力の実例に基づいた本格的な調査と分析は初めてという。

 関東地方の看護専門学校、短大、大学計15校の看護学生712人を対象に07年に調査した。593人(83.3%)が有効回答をした。

 暴力を受けたと答えた学生は352人(59.4%)で、総件数は1498件。種類別では▽精神的暴力44.7%▽性的暴力43.1%▽身体的暴力12.2%。性的暴力では「胸を触られた」「手を握られ、お尻を触らせてと言われた」「後ろから抱きつかれ、頬にキスをされた」「声をかけられ、ずっと追いかけられたり、わいせつな発言があった」などの被害があった。

 最も困った事例について具体的に記述した95人のうち20.0%は、暴力を受けた際、誰にも相談しなかった。「怒り」「嫌悪感」を覚え、「辱めを受けた」「人格を否定された」と感じたという。

 研究チームは、担当看護職員に向けられた不満やストレスのはけ口として経験が浅い学生が攻撃対象となったと分析。三木明子准教授は「暴力は弱い立場の者に向く。患者との距離感の取り方など暴力防止の実技講習を行い、まず予防が大切。防犯ブザーを持たせるなど暴力を受けない環境作りも必要だ」と話している。【安味伸一】

(春之介のコメント)
こうした看護学生に対する暴力調査は初めてということだ。

それにしても2007年調査が、今頃記事になるのはどうしてだろう。

三木准教授は、以下記事にあるように医療従事者に対する患者暴力の研究者である。

関連を調べていくと、かなりの資料が入手できる。

つまり、それほどにありふれた風景になっていることだろう。

看護学生の身分は、病院職員の位置づけではないから、そこで派生する暴力問題に関しても管理が難しいと想像される。

また、医療系に限らず福祉系でも同じような現象はあると考えるので、この分野の実態把握が進むとよいだろう。

対処方法は、法律関係者や警察OB・警備会社などを有効に利用するしかないだろう。

医療者は、残念ながら対暴力の訓練を続けるほど暇ではない。

しかるべく部署に人員を配置し、問題を客観化させて法律的に対応することが不当な患者・家族に対処する際には必要となろう。

また、暴力を受けた医療関係者や学生も含めて、相談できる窓口や人材を配置し、問題の所在を隠ぺいさせないような努力をすることが病院経営側に求められるだろう。


〈以下参考引用〉
社団法人全日本病院協会
2008年4月21日
「院内暴力など院内リスク体制に関する医療機関実態調査」報告 PDF

社団法人日本看護協会
2006年11月8日
「保健医療福祉施設における暴力対策指針 - 看護者のために - 」 PDF

高知大学医学部附属病院
2007年12月5日
「職員への暴力・暴言 対応マニュアル」 PDF

組織で取り組む院内暴力への対応策 PDF

〈以下引用〉
医師の首絞め看護師殴る…患者の院内暴力深刻
2010年10月22日 読売新聞

茨城県内の医療機関で、患者から身体的・精神的暴力、セクハラ(性的暴力)などを受ける院内暴力が深刻な問題となっている。職員の離職や医療サービスの低下につながる事態に、自主防衛策に乗り出す病院が増えている。

市民の意見聞く取り組みも

現場の声
 「医者を呼べ、お前らも殴られたいか!」。県内のある病院の夜間救急外来に、酒に酔った男性が来院した。名前を尋ねる女性看護師に「さっさとしろ。チャカ(拳銃)持ってるんだ!」とすごみ、頭をつかんで振り回した。けがはなかったが、この看護師はその後、不眠が2、3日続いた。

 筑波大大学院の三木明子准教授(看護科学専攻)が6月に出版した「看護職が体験する患者からの暴力―事例で読み解く」(日本看護協会出版会)で、全国の院内暴力の実態が明らかにされた。読売新聞の取材では、県内でも「急いでいるから薬だけ欲しい」と診療を拒否したり、「治療期間が長引いた分だけ生活補償しろ」と無謀な要求をしたりする患者や、女性看護師へのストーカー行為など実例は多岐にわたる。

 院内暴力の背景には患者の権利意識の高まりに加え、プライバシーへの配慮から密室でケアをする病院固有の事情が存在する。三木准教授は「茨城の医療現場は暴力に耐え忍ぶ地域性も見られ、組織での取り組みが十分に進んでいない。医療事故防止対策に比べ、暴力防止対策の優先順位が低い」と指摘する。

助っ人導入
 牛久愛和総合病院(牛久市)では3月、「患者サービス室」を設置した。専任の中村育夫さん(59)は、昨年まで東京都内の病院で同様の部署で働いていた。現場で15分以内に対処できない苦情が発生すると駆け付け、別の診療に影響しないよう別室に移動して話を聞く。看護師からは「仕事に集中できる」と信頼を置かれている。

 処理した事例は、関係する主治医らに必ず報告する。トラブルの再発防止や院内環境の改善に役立てるためだ。中村さんは「患者の要求を見極めて毅然と対応しなければ、理不尽な要求や暴力を振るう患者を生み出す」と、無理な注文には病院の立場を説明する役目も担う。

 土浦協同病院(土浦市)では4月から、県警の元警察官を常駐させている。心理学や護身術などの知識を持ち、法律にも詳しい“助っ人”として活躍している。筑波大付属病院(つくば市)でも3年前から、元警察官を採用。「患者相談窓口」には、患者の情報を正確に把握するため録音・録画装置を設置した。

 牛久愛和総合病院では「地域に開かれた病院を目指し、院内を明るいイメージにしたい」と今月、市民で作る外部評価委員会を設置。理不尽な要求に苦慮する病院の実情を知らせたり、市民の意見を聞いたりする取り組みが始まった。

 三木准教授はこうした病院側の動きについて「一部の患者の無用な暴言・暴力に対し、現場のその場しのぎの対応では解決にならず、組織で対策を立てざるを得ない現状に直面している」と見る。医療の原点である患者と病院の信頼関係構築に向けた模索は続く。(原田この実)

 茨城県内の院内暴力の事例
 ・看護師が殴る、けるの暴行を受け、眼窩(がんか)底骨折で手術、もう1人はあばら骨を折った
 ・つばを吐く、かみつく、ひっかく、暴言を吐くなどの行為を日常的に受けた
 ・作業療法士のリハビリ説明が気に入らず、なだめに入った医師が首を絞められた
 ・朝7時の体操の声かけに行くと、いきなり顔を殴られた。「眠かった」との理由だった
 ・介助のため、もう1人職員を呼びに行くと説明すると「不親切だ。お前なんて簡単に殺せる」と大声を出し、足げりされた
 ・ベッド横でカーテンを閉め、体をふいていると胸を触られた
 ・患者の家族から「体をよくふいていない」、「1番に父の処置をしろ」と召し使いのように扱われた
 (2008年、三木准教授の調査より)

病院の半数被害
 全日本病院協会が2007~08年、全国の会員2248病院を対象に行った「院内暴力など院内リスク管理体制に関する医療機関実態調査」によると、患者やその家族らから職員が院内暴力を経験していた病院は52・1%に上った。1106病院から回答があり、有効回答率は49・2%。

 発生事例のうち、「警察への届け出」は5・8%、「弁護士への相談」は2・1%に過ぎず、多くは院内で対応していた。同協会は「院内暴力の対応に伴う病院負担が大きいことがうかがえる」としている。

 一方、職員の被害状況を院内で把握しようと、報告制度などを整備しているのは38・9%、対策マニュアルや指針を整備しているのは16・2%、院内暴力を回避するための研修を開催しているのは12・7%にとどまった。

〈以下引用〉
・江守陽子
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 筑波大学大学院 人間総合科学研究科(看護科学系)教授
 ヒューマン・ケア科学専攻 看護管理学分野 看護科学専攻 実践看護学領域

・三木明子
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 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 看護学専攻 准教授
 精神保健看護学

 1. 惨事ストレスを被った看護職員に対する危機後の支援方法に関する研究
 2. 病院職員への暴力のリスクマネジメントプログラムの開発に関する研究
 3.メンタルヘルス不全により休職した看護師の復職支援に関する研究

 主な研究テーマは、「ストレスとメンタルヘルス」です。長年、看護職のストレスやメンタルヘルスの研究を行い、ストレスの測定方法やメンタルヘルス研修の効果を検証しています。現在は、病院現場において有用な暴力のリスクマネジメントプログラムの開発に取り組み、暴力防止に関する知識や技術の普及を目指し、多くの病院で職員にトレーニングを行っています。また被害者へのメンタルヘルスケアについても関心を持っています。


「看護職が体験する患者からの暴力―事例で読み解く」
三木 明子, 友田 尋子 (編)
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単行本: 230ページ
出版社: 日本看護協会出版会 (2010/06)

〈以下追記〉
病院はあなたを守ってくれますか- 「院内暴力・暴言、セクハラ」
2011年11月07日 キャリアブレイン

 医療機関は、院内での暴力・暴言、セクシャルハラスメント対策を急いでいる。「かつては看護師が患者に胸を触られても、師長に我慢しなさいと言われ済まされてきたが、今はそうはいかない」(ある病院総務職員)。対策を怠れば、職員は「病院は自分を守ってくれない」と感じて辞めていく。病棟で大暴れする厄介者は、一握りの「モンスターペイシェント」と片付けるのは簡単だが、医師との意思疎通に不満を持つ患者やその家族が、いつそれを爆発させるか分からない。解決の糸口はあるのか。(君塚靖)

 「看護師Aさん(女性、30代)は、慢性腎不全で週3回の透析治療中の患者(男性、70代)から、日常的に『アホ』などの暴言を繰り返され、清拭などのケア時には、殴る、蹴るの暴力を受けていた」
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 これは実際に起きた暴力・暴言の一例だ。ハラスメント対策に詳しい筑波大大学院の三木明子准教授(人間総合科学研究科看護科学専攻)は、問題が生じる背景には、典型的なパターンがあると指摘する。暴力を振るう患者は、弱い立場の人をターゲットに選び、被害者となる看護師は、それが暴力だとの認識が乏しく、「患者を怒らせてしまった」「自分に落ち度があるのではないか」などと思い込み、繰り返しハラスメントを受けるという。

 三木氏はまた、医療者の職業意識も影響していると分析する。「性善説で成り立っているのが医療。人を助けるとか、苦しんでいる人を診ようという気持ちがないと医療職には向いていない。患者が粗暴化したり、セクハラするとか初めから、考えていない。その意識が一部の患者の抑止にならず、暴力を助長している」。

■職員は傷つき嫌気が差して辞めていく

 セクハラなどの1次被害は直接、加害者から受けた暴力や暴言、2次被害は職場の無理解だ。三木氏は「職員やスタッフは、暴力を受けているのに、それが認められないために傷つき、そんな職場に嫌気が差して辞めていく」と、対策を怠っている医療機関に警鐘を鳴らす。

 院内対策が進むかどうかは、病院長や看護部長などが問題意識を持っているかにかかっている。三木氏は、病院トップの責任は重大だと強調する。「暴力を生みだす芽は現場にたくさんあって、誘発している環境であるならば、ひたすらその芽をつむことが重要。患者に対して、『そこまでやると犯罪行為になる』と説明するなど、暴力やセクハラを抑止する安全性の高い職場にしていくのがトップの役割だ」。

■日々の終礼で現場を確認

 杏林大病院(東京都三鷹市)では、現場で起きる暴力行為などを把握するための仕組みを整えている。2009年に院内暴力や、患者からのクレームなどに対応する「患者サービス室」を設置した。

 病棟では、日勤が終わると看護師が集まり、終礼が行われる。同病院では、看護師がハラスメントを受けた場合、終礼で報告することが習慣化されている。その中で特に悪質なものは、患者サービス室に届けることを義務付けている。発足当初、4人体制でスタートした患者サービス室は現在、8人に拡大。同室の上野文英課長は「事案を未然に防ぐために、スタッフを増員した。患者サービス室という名称にしたのは、一部のクレーマーにより、他の多くの人が不快な思いをすることがあり、患者に迷惑を掛けないという意味がある」と説明する。職員を守ることが、ひいては患者を守ることにつながるということだ。

 病棟の看護師長の一人は患者サービス室が発足し、職場の環境が変わったと話す。「わたしは(患者サービス室が)無かった時代も知っている。今は困った時には、そこに相談すれば良いという『一本のライン』があるので安心」という。この看護師長は毎日の終礼で看護師たちに、その日に何が起きたかを聞くことにしている。「セクハラかどうか判断が難しいこともある。血圧を測る時に、たまたま体が触れたのかもしれない。ただ、毎日報告することで、常習性があるかどうかを見極めることができる。わたしが直接、患者に話して解決できることもあるが、それでも駄目な場合、患者サービス室に相談している」。

 もちろん看護部でも予防策を講じていて、女性の看護師に対してセクハラまがいの言葉を口にする男性患者がいた場合、男性の看護師を同行させたり、複数の看護師で対応したりしている。ケアのために、どうしても体を密着させなくてはならない時は、密室にならないように配慮している。

 同病院では、医師や看護師を含む職員向けに「接遇コミュニケーション研修」を毎月1回以上のペースで開催し、患者に対するあいさつの仕方や、クレームを受けた場合の対応策などの教育を続けている。また、全ての職員に「医療安全マニュアル」を配布し、問題があった場合の報告手順を明確にしている。

<以下関連引用>
◆患者からの「院内暴力」、医師・看護師の4割が経験
 2013年3月30日 朝日新聞

 患者や家族から病院内で暴力や暴言を受けた医師や看護師らは4割に上る。こんな調査結果を、私立大学病院でつくる医療安全の連絡会議が29日発表した。診療に影響が出る恐れもあり、各大学で対応マニュアルをつくるなど対策を検討する。

 調査は東京慈恵会医科大や東京女子医大など都内11病院の全職員が対象。約8割の2万2859人が回答した。44%が「過去1年に何らかの暴言や暴力を受けた」と回答した。暴言は42%、暴力が15%、セクシュアル・ハラスメントが14%だった。院内暴力への対応で、25%の医師らが「我慢した」という。

 医療者側にも要因があったとの回答は46%あり、内訳は「説明や確認の不足」(19%)「長い待ち時間」(15・5%)だった。夜間救急の待ち時間が長く「受付の事務員がノートパソコンを投げつけられた」「医師が松葉杖で殴られた」といった事例があるという。【小林舞子】

◆東京都内の私大付属病院職員、4割以上が患者から院内暴力受ける
 2013/03/29 FNN

私大病院医療安全推進会議は、大学病院の職員が受けた院内暴力について、初めてのアンケート調査を行い、4割以上の職員が、患者から院内暴力を受けていたと発表した。

院内暴力をめぐっては、近年増加傾向にあるとされ、安全で質の高い医療の妨げになっている。

今回、東京都内にある11の私立大学付属病院を対象に調査した結果、過去1年間に41.5%の職員が暴言を、14.8%が暴力を、14.1%がセクハラを受けていることが明らかになった。院内暴力を振るうのは、50~70代に多く見られることもわかった。

また、院内暴力を受けた職員の3.7%が「退職したいと思った」、0.2%が「死にたかった」と回答したという。

大学病院の多くは、警察のOBを招いてマニュアル整備などの院内暴力対策を行っているが、7割を超える職員は知らなかったという。

◆「患者からの暴力受けた」4割 都の私立大学病院調査
2013.3.29 産経ニュース

 東京都の私立11大学病院の医療安全推進連絡会議は29日、病院職員約2万9千人を対象に、患者からの暴力や暴言、セクハラ(性的嫌がらせ)などの「院内暴力」の実態調査を行った。その結果、4割以上の職員に、過去1年間に院内暴力を受けた経験があり、「退職したいと思った」ほど追い込まれた職員も3・7%(1159人)いた。

 昨年12月、2万2859人から回答を得た。その結果、過去1年間に患者や患者家族らから暴言を受けたと答えたのは41・5%(9447人)。身体的暴力を受けたと答えたのは14・8%(3370人)、セクハラを受けたと答えたのは14・1%(3212人)。暴言を受けた割合は全職種で同程度だったが、暴力とセクハラは看護職など女性が多い職種で高かった。医療従事者が少ない夜間救急での発生が目立ち、パソコンやハサミを投げつける、刃物をちらつかせるなどの危険な例もあったという。

 大学病院を対象にした院内暴力の調査は初めて。東京慈恵医大病院の森山寛院長は「大学病院の患者は紹介や救急が中心なので、もっと少ないと思っていた。医療には患者との信頼関係の構築が必須。待ち時間の短縮や応対方法など医療者側も改善するが、患者さんにも協力をお願いしたい」としている。


<以下関連エントリー>
訪問看護師「暴力受けた」が半数 利用者や家族に セクハラ被害も 神戸市看護大調査→全国実態調査へ
by negitoromirumiru | 2011-08-22 05:06 | 医療 | Comments(0)


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