NPO厳しい雇用環境 愛知県調査
2011年6月16日 読売新聞地方版
賃金表整備43% 平均年収265万円
愛知県内のNPO法人で、昇給や年齢給などを定めた賃金表を整備しているのは半数以下にとどまることが、県の調査でわかった。正規職員の平均年収は約265万円と、民間会社より低い水準で、雇用環境の整備が遅れている実態が浮き彫りになった。調査担当者は「職員が長期に働くことが出来るよう雇用環境の整備が必要だ」と指摘する。
調査は、県から委託を受けたNPO法人「
ボランタリーネイバーズ」(名古屋市)が実施。昨年3月時点で所在地が把握できる1260法人を対象とし、512法人から回答を得た。
1法人にかかわっている職員は平均45・3人で、うち正規の雇用契約を結んでいるのは4・1人。正規職員を抱える法人のうち、賃金表を整備しているのは42・9%、退職金を出しているのは33・2%、介護休暇があるのは29・4%だった。また、超過勤務手当を支給しているのは40・8%にとどまっていた。賃金表の整備を明確に義務付ける法律はないものの、県では、制度の未整備が低賃金の要因の一つとみる。
一方、法人の収入が3000万円以上の規模になると、代表者の年収も300万円に達するが、民間の406万円(国税庁調べ)よりも、まだ低い。スタッフへのアンケート調査では、「生活や将来の不安がある」という声が多く寄せられており、やりがいを強調するだけでは組織が立ちゆかなくなっている実情もあるとみられる。
(春之介のコメント)
こうした調査は貴重で、十分な労働環境でないことが分かる。
これを、どう考えるか。
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平成22年度NPO雇用状況等調査報告書 【全体版】 (外部リンク)
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「NPO法人の雇用と働き方」調査報告書 【概要版】 PDF文書
〈以下引用〉
NPOの雇用環境 厳しい状況
2010年07月03日 NHK名古屋放送局
愛知県が、増加傾向にあるNPO法人の雇用環境の実態を把握しようと、県内のNPO法人に委託して実施した調査で、県の認証を受けた1260団体のうち、40%余りの 512法人から回答を得ました。
その結果、県内のNPO法人の職員の年収は、平均 265万4000円で、民間企業などの平均年収に比べて24%余り低くなっています。また、退職金を支出しているのは33.2%、超過勤務に対して手当を支給しているのは40.8%にとどまっていて、NPOの職員に対する厳しい雇用環境が浮き彫りになりました。
愛知県は「NPOは震災のボランティアや福祉の分野など活動範囲は広く重要な存在になっている。職員の雇用環境の改善に対策を検討していきたい」としています。
<以下追加引用>
<はたらく> 仕事としてのNPO活動
2013/1/11 中日新聞
利益を出すことを目的としないNPOで働く人は「収入が低い」「多忙」とのイメージがある。実際には、どんな思いで、どんな働き方をしているのか。取材すると「社会に役立っている実感がある」「経営を安定させれば、きちんと生計は立てられる」など、情熱を持って取り組む姿が伝わってきた。
昨年十二月、名古屋市天白区にある団地の一室。同市のNPO法人「御用利(き)きと出前授業」の加藤幹泰さん(28)らは、入院中の六十代男性の依頼で部屋を片付けた。一緒に作業するのはNPOに登録するボランティアの会員。冷蔵庫の中の食品や鍋などを手際良く分別して処分した。
NPOは水道修理やパソコン指導など、得意分野がある人に、有償ボランティアとして会員登録してもらい、依頼に合わせて派遣する。「地域の課題は地域で解決」を目指す、いわば地域の便利屋さんだ。ボランティアは無償のイメージが強いが、活動を継続させるためにも謝礼金を払う仕組みにしている。
加藤さんがこのNPOで働き始めたのは昨年春。以前は名古屋市内で求人広告の制作会社に勤めていた。営業ノルマが厳しく多忙な中、「自分の仕事は本当に世の中のためになっているのか」との思いが強くなった。
大阪に転勤となり、仕事以外の居場所をつくろうと、ごみ拾いをするNPOに参加。メンバーと活動するうち、その魅力に引き込まれた。二十六歳で退職し、そのNPOで約一年働いた。
その後は名古屋の実家へ戻り、現在の職場に。それまで培った「人と人をマッチングさせるノウハウ」が生かせるとの思いがあった。現在の平均月収は約十五万円で、会社勤めの時の六割弱。ボーナスや雇用保険もない。それでも「社会に必要なものを自分で考え、つくり出している実感がある。会社勤めでは満たされなかった部分」と話す。
加藤さんはNPO法人「御用利きと出前授業」と雇用契約はなく、個人事業所として自ら依頼を請け負い、チラシ配りなどで営業もする。将来は独立するためだ。同法人の光武育雄代表(64)は「若者がNPOで働いて生計を立てるには、自身が事業主になるのも一つの方法」といい、経営ノウハウを後進に伝え、組織立ち上げを支援する。
一方、NPO法人「
NPOサポートセンター」(東京都)の職員として働く小堀悠さん(34)は、「NPOは利益を上げてはいけないとの誤解がある。収益事業は可能で、経営が安定していれば会社と変わらない」と話す。小堀さんは自身も結婚しており、家計を担う。平日と月二回は土曜日に出勤し、ボーナスに当たる期末手当や雇用保険もある。年収は約四百万円という。
一般的にNPOの新卒採用は少なく、社会経験を積んだ即戦力を求める傾向にある。小堀さんも以前はIT系企業で働いていた。NPOで安定雇用をするには、「良いサービスに対して適正な対価を得て、事業を成り立たせる必要がある」と話している。
◆待遇は改善傾向に
NPO法人の制度ができて十五年。団体数は年々増加し、今では全国に四万六千以上がある。
東京都の事業を請け負う「
東京しごと財団」の二〇一〇年の調査によると、都内のNPOの事業規模は〇五年に比べ、五百万円未満が51・8%から42・7%に減少。五千万円以上は7・7%から12%に増加した。職員の平均給与は五万~十万円未満が10・4%から5・4%に、二十五万~三十万円未満が8・7%から15・8%に改善している。
愛知県の一〇年の調査では、正規職員の年収の中央値は二百五十二万円(一部の低収入層が平均値を引き下げるため、中央値を採用)。通勤手当の支給率は68・9%、賞与は56・7%。事業規模三千万円以上だと、賞与や残業規定、休暇の充実が進んでいるという。 (田辺利奈)