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社説 質が高くて効率的な医療・介護をぜひ

社説 質が高くて効率的な医療・介護をぜひ
2010/3/15 日経新聞

 高齢化が進むなかで医療や介護をめぐる利用者の不満が高まってきている。地方で医師が足りない、急患を受け入れてくれる病院がない、外科医や小児科医へのなり手が少ない――などの問題が起きている。

 その一方で満足な効果が期待できないサービスに多額の費用をかけている部分がある。適切でない長期入院、いわゆる社会的入院や、高齢患者の機能回復に疑問が残るような「寝かせきり」の病床などだ。

時代の変化で制度疲労

 医療・介護へのニーズと現実のサービスが合っていない。これは心臓病、脳卒中、がんの増加など病気の種類の変化や、高齢化、医療技術の進歩などに、制度が追い付けなくなったからだ。

 時代の要請に応じて制度を抜本から変える必要がある。制度の組み替えでサービスの充実とコスト増の抑制は両立できる。また両立させないと、先進国で最悪の財政状況を回復不能なまでに傷めてしまう。

 本社医療・介護制度改革研究会はそうした考えから、医療の提供体制、高齢者の医療と介護、保険財政の改革などを提言した。

 第1のポイントは医師らが本領を発揮できる体制づくりである。たとえば心臓外科医は2700人もいて多くの病院に散在しているため、1人当たりの年間手術件数は平均20件と、数百件もこなすドイツなどに比べ少ない。これでは高度な現代医療を身に付ける機会が足りない。

 心臓手術など難しい治療は大きな病院に集約し、専門医が多くの手術を手掛けるようにすれば、技量も高まる。その代わり、病院は手術や高度の入院治療などに専念し、軽い病気や外来の患者は原則として診療所医師(開業医)に任せる。

 病院と開業医の役割を明確に分けるとともに双方の連携をとれば、患者は密度が高い医療を受けられる。患者の二重受診や医療機関側の二重検査が減るなど財政面の効率化も期待でき、その分、医療や介護の質の充実に振り向けられる。

 そのためには、様々な病気をひと通り診られる「家庭医」を医学教育の段階から育てる必要がある。過渡期には、一定地域内で既存の開業医同士が連携をとって対応する形が考えられる。そうすれば患者は重大な病気が疑われる場合を除いて、まず家庭医に行く仕組みにできる。

 第2に、高齢者の医療と介護を本人に満足のいくように見直すこと。療養病床では脳卒中などの回復が遅いことも多い。費用がかかる割に生活の質も高くない。また回復の見込みが薄い人には「病気を治す医療」より「苦痛を和らげ、生活を支える医療・介護」が大事だ。

 そうであれば療養病床の患者や一般病棟にいる社会的入院の高齢患者を、より暮らしやすくケアも充実した施設や自宅での介護に誘導するのが望ましい。高齢者については医療保険と介護保険を一体運用し、ニーズにきめ細かく対応する。診療報酬の「定額制」普及を含め、高齢者医療費の増加に歯止めをかけられれば介護を充実させても全体の負担増をある程度は抑えられるはず。

 3番目に、これらの改革を進めても、高齢化により医療や介護の負担感が増す恐れがあるので、公的に提供する医療・介護の規模を国内総生産(GDP)の10%を目安に抑える。それを大きく上回るなら再び制度を改めて効率化を進める。

超党派で議論を始めよ

 第4のポイントは、医療や介護を社会の負担とだけとらえずに、高い医療技術を生かして医療・介護産業を育てる政策だ。そのためには医薬品の臨床試験や審査に関する規制の緩和や、外国人患者の受け入れ拡大、保険診療と保険外診療の組み合わせ(混合診療)の原則解禁――などが欠かせない。

 私費で混合診療を受ける人が増えれば、公的負担がほぼそのままでも医療機関の収入は増える。それは医療産業の成長だけでなく、保険料引き上げの抑制にもつながる。

 これら一連の改革を実行するには医療関係者や一部患者に努力や負担を求めざるを得ない。カルテの電子化や診療報酬請求のオンライン化は治療の適否の判断や、病院と開業医との連携に役立つ。医療や介護の質を高めるには看護師や介護士の仕事の範囲を広げる必要がある。

 また市販薬と同様な薬は全額、患者負担にするなど軽症の患者に負担を求めるのはやむを得ない。

 これまで医療・介護制度の改革があまり進まなかったのは、こうした問題で関係者間の利害調整が進展しなかったからだ。政治家は超党派で問題に取り組むべきである。同時に地域の実情に合わせて医療や介護の体制を整えられるよう都道府県に可能な限り権限を移し、その自主性を尊重することが大切だ。

 改革は一朝一夕には進まない。だからこそ早めに着手してほしい。

(春之介のコメント)
何かパッとしない社説である。

医師の配置や、専門医・家庭医の専従化は他国で実施しており十分効果があるが、自由開業の日本ではどうしても限界があるし計画ができない。

医師は、国民のためという意識もあるが、自分自身の人生・生活も計算済みだから簡単には誘導されないだろう。

医療保険と介護保険を一体運用し、ニーズにきめ細かく対応…言うは簡単だが、一体運用することは至難だ。

公的に提供する医療・介護の規模を国内総生産(GDP)の10%を目安に抑える…10%なのか分からないが、歯止めを設ければ、増え続けるニーズ対応は低下するばかりになるのではないのか。

医療や介護を社会の負担とだけとらえずに、高い医療技術を生かして医療・介護産業を育てる政策…ここでは、具体的には混合診療や規制の簡素化などが書かれているが、それが利用者の便にたっていることが前提ではないのだろうか。

やはり、介護は儲からないのか!?
by negitoromirumiru | 2010-03-30 01:21 | 福祉 | Comments(0)


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