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快楽亭ブラックの毒落語とは!?

快楽亭ブラックの毒落語
[著者]平岡 正明
彩流社 / 1890円
2009/10/11 中日新聞書評

■日本人の空涙を笑い倒す
 「学者と思想家の違いは何か。学者はサラリーマン。思想家は自国の民衆の『悪』を見つめて、たじろがない人のことをいうのです」

 今年七月九日、流れ星のように夏の夜空に去った平岡正明さんが、その四カ月前に病床で語った言葉である。この本の「『あとがき』にかえて」に記録されている。ほとんど遺言に近いだろう。その言葉通り彼は『日本人は中国で何をしたか』『石原莞爾試論』など、この国の民衆が孕(はら)んだ「悪」のエネルギーとその構想力を限界まで掘り進む仕事を遺(のこ)した。

 それだけじゃない。彼は大笑いしながらそれを抉(えぐ)りだしたのである。『一杯のかけそば』というベストセラーを覚えているだろうか。凍(い)てつく札幌の大晦日(おおみそか)にそば一杯を親子三人で分け合うという、二十年前のお涙頂戴(ちょうだい)話である。立川談志に破門された異端中の異端落語家、日米混血の快楽亭ブラックが、この甘ったるいお話をひっくり返すとんでもないパロディーを語る。舞台をソープランドに変えたのである。な、なんと小学生と中学生と男親が大晦日にそこへ!? 三人で一人のソープ嬢を?? 後はもう新聞には書けないからCDで聴いてほしい。自作口演の旅すがら寸借詐欺で捕まった「かけそば」の作者の雁(がん)首を見据えて、平岡さんがブラック師匠に取り憑(つ)きながら笑い転げる。そして、こういうヒューマンな説教が「プロレタリアートの魂を腐蝕させる」という。

 借金と舌禍にまみれ日米国家の崖(がけ)っぷちに立つ師匠は、この善人話に流される空涙が我慢ならない。平岡もそこに、この国の「善人たち」が涙も乾かないうちにやらかしてきた「悪」の歴史を見た。バブルな「かけそば」から小泉靖国芝居へ、今の「田母神熱」へと空涙は涸(か)れない。

 平岡正明はそんな遊星にも似た「笑う思想家」だった。ブラック師匠の落語アナーキズムも銀河の外へぶっ飛んでいる。
[評者]平井 玄 (批評家)

ひらおか・まさあき 1941~2009年。批評家。音楽・文芸・芸能など広く活躍した。著書に『ジャズ宣言』『大歌謡論』『大落語』など。
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(春之介のコメント)
落語ブームである

その陰で、決してマスコミ本道には現れない落語家がいる。

その落語の内容が、あまりにもお下劣だから…放送できない内容なのです。

艶話というジャンルがあるが、それを古典から新作まで演じているもの。

コアなファンはいるが、そこはコアだからね…、興味ある方は探して聴いてね。038.gif


<以下追加引用>
快楽亭ブラック「年忘れ毒演会」 大須で31日
2012/12/28  中日新聞夕刊

 政治から下ネタまで歯に衣(きぬ)着せぬ語りで知られる快楽亭ブラックが三十一日午後六時から、名古屋・大須の大須演芸場で、三回目となる「年忘れ毒演会」を開く。

 ブラックは、きわものの新作に目が行きがちだが、古典にも定評がある。今年は、師匠立川談志から真打ち昇進を認められ、二代目ブラックを襲名して二十年の節目となることから、十八番と自負する「四段目」「川柳の芝浜」など六十の持ちネタを示し、来場者にリクエストを募って上位八席を口演する。

 「師匠談志から教わった噺(はなし)、志ん朝師匠に稽古をつけていただいた噺、自身で練り直した古典など落語上級者から初心者まで楽しんでいただけるはず」とブラック。

 来場者全員に、ブラックの最新落語CDを進呈する。3500円。(問)快楽亭ブラ坊=電090(8287)8119
by negitoromirumiru | 2009-12-22 01:15 | 箪笥 | Comments(0)


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